(お)・・・鏡花 町田恵一氏  (か)・・・しゃかりき 梶充秀氏

(お)難しい質問だよな。

(か)難しいですよね。

(お)俺も梶もたたき上げでラーメン作りをやってきた訳じゃないから、
    俺もどこかで修行してきた訳じゃないから、ラーメン作りといわれる
    と・・・。でも俺が心がけてきた事は、今まであるラーメンのモデルは
    ある訳じゃん、それを勉強はするけれど同じ事は絶対にやらないっ
    て事。いろんな場所にあるモデルの味を知った上でそれをやぶる、
    その道にはいかない。

(か)我が道を行くですね。

(お)そう。

(か)あえて避けるんじゃなくて、知った上で進んで行くって事ですよね。
    そうですね、僕もいろんなラーメン屋さんを見てきましたが、それを
    否定するんじゃなくて僕は僕のやれる事をやろうって思ってきました。

(お)それは俺が唯一心がけてきたことかな。

 

(お)今、インスパイアって言葉があるだろ。あれって刺激を受けるって
    事でマネじゃないんだよ。刺激を受けるってのはいいんだけど、
    パクっちゃうとインスパイアじゃないんだよね。

(か)なるほど(深くうなづく)

(お)あとは遊び心だよな。お客さんを驚かせたいとか。

(お)お客様とは俺の師匠やな。きれいな女性を見たら恋人って思う時も
    あるけど(笑) おじいちゃんが来たら自分のおじいちゃん、おばあ
    ちゃんが来たら自分のおばあちゃんと思うようにしてるよね。

(か)僕はまだそこまで大人やないですわ。

(お)でも梶がいた頃の俺はそうやなかったよな。まだお客さんとケンカ
    してたよな(笑)

(か)そうですね。ケンカするつもりで作って、うまいって言わせろって
    感じでしたもんね。

(お)今は全然そんな事は思わないけどな。

 

(お)それもあるよな。最初の頃は自信はあるけど、強い自信がないん
    だよな。やっぱりビビリもあるんだよな。“俺の味がわからん奴は
    来んでええよ”みたいな。

(か)僕のおやっさんに対するイメージはそうでしたね。

(お)つっぱってたんだな。

(か)僕はつっぱってることに対して疲れてるおやっさんを何度か見た
    ことがありますわ。

(お)今は楽しくやらしてもらってるよ。お客さんが口に合わないって
    言っても、それはそれで平気で受け入れるし。
    そこからまた新しいラーメンが生まれるし。

(か)それは良くわかります。

(お)口に合わない?何が口に合わないんだろうか、それじゃ今度こ
    んなの作ってみたろとか。

(か)そういう余裕が僕も欲しいですわ。まだまだですわ。作り手として
    のテンションの波が僕にはあるんでしょうね。

(お)俺がいいもん使ってるとか、俺は苦労してるとか、それは目に見
    えない商品価値であって、それを分からせようとか、分かってもら
    おうとか思ってなんだよな。どんだけ安い食材でどんだけ手抜い
    てても、お客さんがおいしいって言ってくれればいいんだよ。
    逆にいい食材を使って手間ヒマかけても、お客さんにうまいって
    思ってもらわなきゃしょうがないんだよね。
    “お客さん喜んでや”って感じやね。

(か)いろんなタイプの作り手がいるけれども、おやっさんは“これが全
    てや”って感じじゃないですもんね。もちろん味の探求をされて
    いた時期もあるとは思いますが。

(お)そう、“一期一会”ってシリーズがあるんだけど、これは別。俺が
    作りたいもの作ってるから、お客さんは無視。気に入らなきゃ食
    べんでええわって思ってる、それは一期一会シリーズだけ。

(か)うわぁーそういうの持ちたいですわ。“ザ・おやっさん”って感じの
    やつですね。僕も“一期一会”シリーズやっていいですか?

(お)華厳の滝(※2)とか今昔鶏想麺(こんじゃくけいそうめん)(※3)
    は使っていいけど、“一期一会”はまだダメだよ。

(か)う~残念です(笑)

 

(お)日本一になる事だよ。日本一ってのは、日本一売っているから
    日本一なのか、日本一儲けているから日本一なのか、日本一
    美味しいラーメン作ってるから日本一なのか。だけど日本一美
    味しいラーメンってのは誰が決めるの?
    俺が日本一って思えば日本一。

(か)深いですね。

 

(お)俺自身もそうだけど“地に足つけて”やっていって欲しいよな。
    こんなデフレ不況の世の中だけど、ラーメンはまだメディアにも
    登場してるよな。だけどブームやメディアに頼っちゃうと・・・。
    やっぱ本物にならんとアカンわな。お客さんにちゃんと店に足
    を運んでもらえるような。事業だから拡大欲とかもあるだろうし、
    今現在3店舗やってる中でおまえが例えばだよ、海外進出を考
    えて一年間いなくても回っていくような組織作りも地に足つけて
    考えていかんとアカンと思うな。地固めをしていかないと。

(か)僕が逃げだしても大丈夫なように(笑)

(お)地に足つけるという意味で人材の育成も大事だよな。

(か)そうですよね。それは頭の痛い問題のひとつでもありますね。

(お)単純に3店舗になって売り上げが3倍になるかっていえばそうで
    もないし、人がいてこそ売り上げが上がっていく訳だからな。

(か)ビジュアル的にいい女性・男性だけを入れれば良いってことで
    もないですしね。僕は長所を伸ばすような人材育成をしていき
    たいと思っています。

(お)まぁとりあえず、プライベートも含めて地に足つけて、お互い
    がんばっていこうな。

(か)よろしくお願いします。(握手)

 

※1 ある特定の店が提供するラーメンに似た味を出すこと。
※2 町田氏の湯切りパフォーマンス、幻想的な様からこのように呼ばれている。
※3 町田氏、初期のメニュー。